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ウユニの町は、標高3660メートル。 ボリビアの南部に位置している。 ウユニ塩湖は世界最大の塩湖であり、 タテヨコに100キロメートルを超える。 ウユニの町は小さく、本当に何もない。 10分あれば町の端から端まで歩けてしまうくらいだ。 ウユニ塩湖を見せ物とする観光業でこの町は成り立っており、 シーズンになると観光客の方が住人よりも多くなってしまうこともあるという。 ボリビアは、道路状況が非常に悪く、 街を一歩出ると舗装されていない道が当たり前といった感じである。 そのため交通事故が多く、それによる死者も多い。 あるバスが通る崖っぷちの道では、毎年200人程が亡くなるという。 そういう状況でも舗装がなされないという現実が、この国の貧しさを物語っている。 ウユニへはポトシという街から夜行バスで移動した。 山道を走っていた夜中、バスがぴたりと止まり動かなくなった。 そういったことはよくあることだったため、あまり気にしていなかった。 |
しかし、30分以上経っても全く動かない。 心配になり窓を開けてみると、前後のバスやトラックも止まっており、 外に出て何やら話し込んでいる。 そして、「道がない、道がない」という声が聞こえてきて、 ようやく土砂崩れがあったのだということを理解した。 呼べばすぐに応援が来るような場所でも国でもない。 それから2時間、バスのスタッフも乗客も一緒になって、 バス1台がようやく通れる程の道をつくった。 乗客は皆歩いて崩れた場所を抜け、バスが来るのを待った。 そして、1台が通り抜けを成功するごとに大歓声がわき起った。 ウユニには、三時間遅れで無事到着することができた。 |
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右に土砂、左に崖という状況。 更にバスのライトしか灯りのなかったその場所で、1つだけ救いがあった。 それは、満点の星空。 宝箱をひっくり返したかのような星を皆で見上げていると、 不思議と恐怖感などは感じなかった。 逆に珍しい体験をしてしまったなどという気持ちになっていた。 冷静になって考えると、一歩間違えていれば死んでいたかもしれない状況だった。 けれど、今ではそれも良い思い出だ。 生命や時間や自然や宇宙。不思議で仕方のないものはかりだけれど、 すべてこの世にあるもので、関係している。 そんなことを漠然と考えるような出来事だった。 塩湖の上にある集落で暮らす子供たち。 私が近寄っていくと、塩が積んであるところまで行き、 こうやって遊ぶのだと言わんはかりに塩山を駆け上がっていった。 彼らの中には、観光客が来たらお金をくれと集る子もいる。 どこにでもある光景だが、やはりやるせない思いが込み上げて来る。 |
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経済状況は悪い。 街から離れているため、商売を拡大することも出来ず、 塩の採掘とここを通りがかる観光客をターゲットに商売をするしかない。 観光客には、主に、塩で作ったという置き物とサボテン細工が売られている。 塩湖の中には塩で出来たホテルがある。 何から何まで塩で出来ている。 塩を固め、切り石のように直方体にして使う。 ポーランドには岩塩採掘場があり、教会をその中に作ってしまっていたことを思い出す。 そちらは非常に芸術性に飛んでいて、ダ・ヴィンチの最後の晩餐などのレリーフやシャンデリアまで塩で作っていた。 このホテルにはそういった華やかなものはないが、素朴で何もない感じがボリビアらしくて良いのではないだろうか。 |
360度一面の塩。 |
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魚の島という名のついたインカワシ島(ISLA DEL INCAHUASI)。 小さな島で、周りの海が干上がってしまっているため、 今では真っ白な塩の大地に浮かぶ丘のようだ。 この島は、その昔インカの人々が植えたというサボテンで埋め尽くされている。 サボテンはどれも大きく、世界最大とされるサボテンまで存在する。 インカの人々がどうしてここをサボテンでいっぱいにしたのかはよくわかっていないが、 当時の状況をいろいろと想像するだけで楽しい。 ここまで来る間、地とも空ともつかないような景色を見ながら、 ひたすら真っ白な塩の世界を堪能した。 インカワシ島が見えた時、地面に張られた水の膜に島が映り、本当に魚のように見えた。 一瞬にして魚の島と言われる理由がわかった。 そして、島に近付くとともにはっきりとサボテンの形が浮かび上がる。 |
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島の頂上と思われる場所まで登ると、
そこからは見たこともないような広大な景色が広がっていた。
まさに絶景。 |
素晴らしい景色というのは、
そういうものなのかもしれないとそのたびに思う。 ボリビアの旗が揺れているのを見て、 果てしない空間がようやく現実のものとなる感覚は、 意識を持って夢から覚めたような、なんだかそんなような感じだった。 |
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ご愛読ありがとうございます。 これで「ボリビア編2」はおしまいです。 次のエピソードは「エピローグ」です。 ひとつの小さな旅が終わります。 |
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